第四週 ヤバい時、引くべき時

 確信が持てるまで煮詰めた馬券しか買っちゃいかんというのは毎度言っておることぢゃが、それ以外にもレースを絞らねばならない時というのは存在する。ヤバい時、引くべき時を心得なければ、いらぬ損失を悪戯に増やしてしまうことになるのぢゃ。具体的な例を挙げてみようかの。

 

1.開催代わりは荒れるのか?

 「開催代わりは荒れる」とはよく言われることぢゃ。開催する馬場が代わったばかりの週は、騎手たちの頭の切り替えがまだ充分ではない。故に、仕掛け遅れて差し届かない差し馬やら息の保たない逃げ馬やらが続出し、馬券が荒れる・・・と、まあこういうことになっておる。しかしまあわしに言わせれば頭の切り替えが出来ていないのは新聞のダンゴ打ちとそれを読むファンの方で、あんちゃんならともかく中堅以上の騎手なら今更馬場代わりにとまどうわけもない。トップジョッキーなどは土曜は府中で日曜は阪神という乗り方はザラなんぢゃから、更に頭の切り替えはスムースなはずぢゃ。故に、自分の頭の切り替えがしっかり出来ているならば、別に開催代わりは引くべき時ではない。それよりも、1日1日の最初の何レースかをじっくり観察し、その日の自分の予想のフォーカスがしっかりあっているかを把握することの方が大切ぢゃ。特にダートは馬場状態が日々刻々で変化する。少なくとも最初の一レースはケンをする習慣を身につけたい。即ちそれが引くべき時というものぢゃ。

 

2.頭数と騎手が波乱を作り出す

 堅い日と荒れる日というのは確かに存在する。その原因は事前に把握できる時と、把握できない場合がある。例えば時期的に出走頭数が著しく多くなっているとき。不利、アクシデント、壁、逃げ馬の競り合い、これらのモノは出走頭数に比例して当然その頻度が状況が極端に上昇するモノぢゃから、こういった時に大勝負をかけるのはわざわざリスクを高値で買いに行くようなモノぢゃ。逆に言えばそれだけオッヅが上昇するわけだから、資金は少なくてもいいし、大本命馬にも手を出しやすい。実際ヤバい日なわけぢゃから、堅く弱気に行くのが正解ぢゃな。また、G1の週には東か西に東西のトップジョッキーが集中する状況が出来る。当然反対側の開催はメジャーなジョッキーが手薄になるわけぢゃが、ここにリーディングで上位を行く騎手が二人三人残っていると、もはやそこは彼らの草刈り場となる。岡部のカタメ打ちなどと言われるモノは、概ねがこういった状況下で行われているんぢゃ。ところが裏開催ぐらいになってしまうと逆の意味で騎手の力の差が希薄になる。ていうか、レースの中心となる騎手がいなくなってしまうんぢゃな。こーなるともう荒れるのは目に見えている。上記のような状況下で馬の能力のみを中心にした予想を行っていると、手ひどい目にあう。特に荒れるとわかっておる場合には手を出さないのが無難というモノぢゃ。

 

3.雨の日のダートはヤバいぜ

 「雨の日の午後はヤバいぜ」ちゅうのはテレビのルパン3世の副題ぢゃったかのう。まあでも馬場の問題については触れないわけにはいくまいよ。まず雨によってもっとも影響を受けるもの、それはダートの競馬ぢゃ。一般に良・稍・重・不の四段階に種別される馬場状態ぢゃが、稍にも良に近い稍、重に近い稍があり、良にしても多少しまっているモノとぱさぱさの場合とがあり、それぞれが全く別物と言っていいほど競馬の流れを変えてしまう。つまり四段階というのはかなりに大雑把な分け方であると言うことを頭に入れて置いた方がいい。これは結論だけ言ってしまうが、「稍重」のダートと「不良」のダートというのはヤバいから手を出してはいかん。中途半端なコンディションではスピード派が台頭するかパワー派が台頭するかの判断がつかん。また、コンディションが悪くなりすぎれば脚抜きがいいどころかぬかるむ状況に陥る。さすればまたパワー派の台頭ぢゃ。馬場の発表が保水率の%で為されておらぬ以上、パワーとスピードの変わり目となりがちな稍と不良ははっきりいって手をださんほうが安全というものぢゃ。芝なら単に追い込みと経験の薄い騎手から切って行くだけの単純な作業なんぢゃがな。

 

4.回収額こそ平均させると言うこと

 予想してみて、候補の馬が絞り込まれていく。ここでオッヅを見て最後に買い目を絞り込む前に、さて何頭にまで絞り込めたかというのがまず第一点ぢゃな。わしの場合は3・4頭にまで絞り込めなければ、連勝馬券には手をださん。加えて期待される配当がそのレースの投資額全体の4倍を見込めなければ取りガミに等しいというのは前に書いたな(ちなみにG1は企画としてやむなくやっとるだけで、朝日杯・ジュベナイルフィリーズ などは本来ケンすべきレースぢゃな。JCも同じこと)。単複に至っては2頭以下に絞り込めていなければ手を出したりはせん。そういうバリアを作っておかないと、ギャンブル心というのが芽生えてしまう。ギャンブルをするのにギャンブル心を持ってはいけないと言うのも変な話ぢゃが、競馬は宝くじとは違う。毎回確率も変われば回収額も変わる。つまり、100枚の中に1本1000万の当たりが入っているくじと10000枚の中に10万円が1本しか入っていないようなくじが、殆ど見た目変わらずして次々と売り出されていく。欲に目がくらみすぎると、後者のようなクズくじに大枚をつぎ込んでしまうような事態にもなりかねん。だから自分がどんな時でも気がついたら一歩引いて自分を見つめ直してみなければいかん。そうしてみてもしも自分が欲をかきすぎていると思ったら、その時には潔く、その日は引くべきぢゃ。例えば猛烈に、しかもすぐに買いたいモノがあるとき。暫く忙しいのが続いて競馬が出来ず、自分自身が入れ込んでいるなと感じたとき。負けが込んで、何とか今日中に負け分だけでも取り返さなければなどと考えてしまったとき。そしてまた、妙に調子のいい出だしを切っているとき、全てが危険ぢゃ。こんな時は少なくとも投資を抑えること。なにかしら自分でルールをつくり、自分の欲目心を抑える工夫をせねばならん。負けを抑えることこそが勝ちの第一歩。即ち引き際を心得ると言うことぢゃ。

 

 

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